子どもの多様性と不登校について
なかむらクリニック
中村公哉
私は心療内科のクリニックで勤務しており、児童思春期の子どもたちの悩みをお聞きする機会も多いです。仕事の性質上、支援学級への入級の可否の決定や、社会資源の利用などの目的で「発達障害」の診断をせざるを得ないことがあります。「発達障害」の診断を下すことに対しては、いつもその是非に悩み、葛藤する日々です。
当院ホームページのブログにて、「人はグレーゾーンに生きている」という記事(2024.7.19更新分)がありました。「定型発達」や「多数派」として普通に社会で生活している人たちも、「コミュニケーションの苦手さ」や「こだわり」などをそれぞれみんなが大なり小なり抱えて生きており、「発達障害」か「定型発達」かのように線引きせず、お互いの苦しみや悩みを分かり合えると良いですね、という内容でした。
かく言う私も、自他ともに認めるADHDです(笑)。これまで心療内科の受診歴はなく、一応「定型発達」として暮らしています。しかし、学生の頃は落ち着きがなく衝動性も強く、道に飛び出して車に跳ねられて吹っ飛ばされたこともあります。不注意も顕著で、忘れ物もかなり多かったと記憶しております。また、成人になって働き出してからもその衝動的な言動で他者を傷つけてしまい、後で激しく落ち込むこともいまだにしばしばあります。しかし、周囲の方々に支えられ、認めてもらうことで、やりがいを持って仕事に励むことが出来ており、「お互いを認め合う」ことの重要性を感じています。
実は学生時代に、一時期私も不登校に陥っていました。当時、ゲームセンターでストリートファイターなどの格闘ゲームが盛んであり、ハマって遊んでいました。成績はもちろん急降下(笑)。しかしその後しばらくしてまた登校をするようになり、今は何とか一応、働けているつもりです。なぜ当時不登校になったのかについて思案に耽ることがありますが、今でもその要因はよく分かりません。本当にふとしたきっかけで不登校に陥るのだろうと思います。
どんな経験も、素晴らしい経験です。
私は学生時代の経験のおかげで、現在の診療の中で不登校やゲーム依存に陥っている子の気持ちがよく分かります。「人間万事塞翁が馬」、どんな経験も、5年後10年後にその人のアイデンティティとなって蘇ってくるのです。
「不登校」も「ゲーム依存」も、きっと素晴らしい経験です。スティーブ・ジョブズが2005年のスタンフォード大学での講演で話したように、「点」と「点」は後で「線」となって繋がりますから、どんな「点(経験)」も貴重なのです。
私はクリニックでの診療だけでなく、「こころの授業」の依頼を受けて学校にお伺いする機会も多く、たくさんの子どもたちとお話する機会がありますが、本当にみんなそれぞれだなと思います。みんなが違っていいと思いますし、多様性が尊重されるべきだと思います。
大人が仕事を探そうとする時、多様な選択肢(職種)があります。その人の特性に応じて、自分に合う仕事を見つけていけるのです。同様に、子どもたちにもそれぞれの特性に合わせて居場所の選択肢があって良いと思うし、今後、全ての子どもたちが自分に合った過ごし方が出来るような社会になればと願っております。
最後に、私の好きな児童文学作家の石井桃子さんの言葉で締めたいと思います。
「子どもたちよ。子ども時代をしっかりと楽しんで下さい。大人になってから、老人になってから、あなたを支えてくれるのは、子ども時代の「あなた」です。」
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