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ピアサポーターとしての視点しかない
「不登校、ひきこもり」というライフスタイルが、個性的で、自分らしい生き方

NPO法人フリースクール阿波風月庵
理事長 林 三知男

 私は、「不登校・ひきこもり」に関する支援活動に携わり、25年になろうとしています。多くの若者やそのご家族と一緒に活動を進めてきました。
 この活動では、ご家族の理解と見守りがあってこそ、本人が自信をもって前に一歩ずつ進んでいけるのだと感じてきましたし、そこが重要ポイントだと思います。私は、そのご家族と共に歩むピアサポーターの視点を大切にしながら、出会った一人一人の若者の個性を尊重出来てきたろうか?と、常に自分に問いかけ続ける活動でありました。
 何故なら、答えがないからです。
 多くの場合、支援は就学か就労を迎えると卒業となりますが、私はそこが卒業とは考えてはいないからです。私が考える卒業は、コミュニケーションに安心が持てて、自分の気持ちを大切にできて、家族とのつながりが実感でき、相談する仲間と失敗談を語り、誰とも対等に話ができる自分と出会えることだと考えているのです。
 それは、私が同じ「不登校・ひきこもり」時代を経験した共感者として、苦しみを、戸惑いを言葉にする「対話」を心がけて、お互いが繋がりを実感しようとしてきたからです。
 私は10歳代で戸惑いながらぶつかり、20歳代で危うい自己否定をし、親・社会に反発し、30歳代で子育てを通して自分を育て直し、40歳代で心と向き合い、人生後半の生き方を求め、50歳から風月庵活動での経験を経て、やっと現実の自分を、自分と家族の関係を、そのままに受け入れる実感を得ることができました。
 沢山の失敗と自責の痛みを積み上げた経験があっての末、見えてきた世界があります。その経験はみんな違っているのですが、歩もうとしている焦りと孤独に違いはないのです。みんな、似たような経験を積み上げて、前に進もうとしている仲間なのです。「不登校・ひきこもり」というライフスタイルこそが、個性的で自分らしい生き方を求めて、もがき続けている姿だと見えるからです。ならば、今、ここから、自分が、自分に合った、自分のやり方とペースで歩める人生の歩み方を始めてもらいたいのです。
 ただ、多くの若者が、その道に、その歩み方に、まだ出会っていないのです。
 自分らしいライフスタイルに出会うための歩みを続けるには、長い時間と、様々な挑戦と、失敗しても支えてもらえる家族や仲間が、必ず必要なのです。その長い歩みの途上で、社会がかわり、家族(親)がかわり、自分がかわり始められれば、新たな自分らしい生き方を歩み始めることは出来ると思います。
 25年前、私たちが活動を始めた頃とは、社会制度も、常識と言われたことも、家族の価値観も、周りの様々な環境もかわっています。誰よりご本人が、自分の可能性を見つけ、実感して、経験を積み、家庭での安心と、社会への信頼を、ご本人とご家族と多くの支援者と共に育て合ってもらいたいのです。
 今、ここで立ち止まる若者に、本人が歩き出す時を信じて、穏やかな見守りと共に、温かい声を、時々、掛け続けていただくことをお願いします。

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